第68章

「そうなの?」北村優子は眉をひそめた。彼女にはそうは思えないのだが?

一方、北村健は車の中に座り、何度も電話をかけたが誰も出なかった。

車の窓の外では雨がしとしとと降っていて、窓越しでも言いようのない憂鬱さが漂っていた。

小林進からも電話がかかってきた。彼はネクタイを引っ張りながら、電話に出た。

「話せ」

小林進はその口調に驚き、急いで要点だけを伝えた。「あのバースデープレゼント、夏目さんはあまりお気に召さなかったようです。お客様との面会が終わったら必ず彼女のところへ行くように、とのことです。さもないと...もう相手にしないそうです」

「わかった」北村健は電話を切り、アクセルを踏...

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